#041
どれだけ想えば
どれだけ泣きながら呟けば
気が済むんだろう
届かないんだって
こんな、離れた空の下
声を出しても聞こえないんだって
知ってはいても解らないんだって
枯れるほど叫んでも気付きはしないんだって
どれだけ
どれだけ
どれだけ
君を好きかなんて





#042
台風の所為だ
あの人の名前を呼びたくなるのは
強い南風が、声を攫って、
気まぐれにあの人の居る街に
投げ捨てていってくれやしないかと
柄にもないことを思わせるからだ。





#043
こんな昼下がりに種は飛ぶのだ。
こんな何でもない日に、
ふわふわと風に乗って。
どこからきて、どこへゆくのか
「どこでもいいのさ」
種は応えた。
「いつか舞い降りた土の中へ
精一杯根をはって
精一杯生きるだけだ」
ああ種たち、
その頼りない体で
想う心はなんと壮大!
ならば私はここで祈ろう
いつかまた、何でもない昼下がりに
精一杯生きたお前達が
次の種を風邪に流すことができるよう、
私がそれらをこの目で
この窓から眺められるよう
そっと風に祈ろう。





#044
暮れる街が赤く染まれば話す口実ができたのに
蒼いまま、暗くなる、海の底に沈むみたいに
3次元の君、まだ後ろからしか見れない僕がいる
美しいままの気持ちでいるのは辛かった
困ると知っていて吐き出した
君は優しかったよ、優しく責められている気がしてた
生温かいガラスを抱きしめた、君のようだと思った
虚しく空回りする僕の手が透けて見えた
泣き方なんてあの日捨てたと思っていた
笑っていられる気がしてた
部屋の明かりが僕を照らす、冷たい空気が哂う
予想外に空が赤く染まりだした
こんなじゃ駄目だ、もっと、もっと赤くなけりゃ
君は笑ってなんかくれないさ
それでも恋しくて、メールを送った
少しだけで良いから、僕を見てくれ





#045
ずっと一緒に居たくて
呆れるほど狡猾にそうなる方法を考える。





#046
目の前が
ひびいって
白でもない、黒でもない
色のない
何もない中に
転げ落ちていきそうだ





#047
その内いつも一緒に居られなくなるから
「今のうち、少しでも慣れておく」なんて
強がりを言ってみるけど
口にするたび
心が軋んで
泣き叫んでしまいたくなるんだ
「離れていかないで」なんて言えないから
今日もそっと、ぎゅっと唇を噛み締める





#048
泣かないようにしようって
笑って「一人でも大丈夫」って
言おうとしたのに
あなたの瞳は私のちゃちな嘘も見えも甘えも
全部見透かして
歪んだ笑顔の私を映す
あなたの腕が、掌が
優しく髪を撫でるから
そっと背中をさするから
ズルイ人、
何も言わないくせに
ほら、
待ってましたとばかりに目尻に伸びた親指
ほんの少し微笑んだ口元





#049
好きじゃないなら
拒んでもいいはずだろう
どうして
そんな声で呼ぶ?
好きじゃないなら
そんな響きはこもらない筈だろう
どうして
大事そうに呼ぶ?
呼べと頼んだのは私なのだから
ただ、3つの音を発すれば済むでしょう
なのに、
どうして
抱きしめて、私の名を呼ぶ?





#050
一瞬
世界が
あなたの声とともに
終ったのだと思った。