#61

中途半端な僕が
時間に蝕われていく
穢れない君が僕を攻め
優しいあなたは傷ついても僕を許す
寒いのは怖くて、寂しくて
汚れた手を伸ばす
誕生日の贈り物
暇潰しの玩具
温かさを伝えるキカイ
「何をしたいの?」
わからない、わからないんだ
走って、走って
疲れてしまった
刻まれてるのは君の言葉
涙の跡、殴り書きのノート
誰か来て、誰か来て
「お前は人を愛してはいけない」
罪の印ごと抱きしめて
ずっといて、ずっと傍に居て
朝は怖くないって教えて
朝が怖くなくなる迄隣に居て



#062

汚い私が居る
嫌な私が居る
何も知らないくせに
何でも知ってるふりをする私が居る
傷つけた私が居る
傷ついたような気になった私が居る
それを知った私が居る
人は私を赦すけど
私は私を赦せない
罪なんて消える訳がないよ
大体罪なんてカッコイイもんでもない



#063

死神が囁く
バグっていく私
願ってたことと逆の方向に
普通の顔した「私」が動く
こわれていく
「皆に嫌われて、皆から疎まれて
お前なんか死んでしまえ」
最悪のストーリー
自分の中の誰か
止まらない、裏切って、
傷つけていく
そんな中そんな中そんな中
ああ、
守りたい、君の笑顔



#064

壊れていく中で
すれ違って
言わないまま
僕たちはお互いを
守ろうとしてた



#065

笑うことが怖いんだ
幸せに触れる度
心の隅の小さな小さな暗闇が哂う
怯えを感じさせないよう、悟らせないよう、
いつも強がるしか出来ない
気付いて欲しいなんて高慢
愛しい君に告げたくはなかった



#066

私は
あなたを
幸せに
したかったのです
いつからか
あなたは
笑わなく
なってしまった
私が
笑っても
笑わなく
なってしまった
あなたが
笑うのなら
何でも
良かったのに
段々
私の手も
心も
病んでいって
あなたを
不幸にする
ばかりだ
あなたを
傷つける
ばかりだ
ならば、いっそ
私が、消えれば
あなたは
幸せだろうか
あなたは
笑うだろうか
けれど、私は
死ぬには
臆病で
今となっては
このように
あなたを
裏切って
傷つけた
今となっては
あなたは
憶えていないだろう
憶えていても
最早
真実ではないだろう
言葉に、
「消えたら
幸せなんかじゃ、
ない、
不幸だよ」
「だから
消えるとか
言わないで」
その言葉に
すがって
しまうのです
こんな体の
今ですら、
こんな心の
今でさえ、
浅はかにも
程があるのに
生きて
あなたを
幸せにしたいと
思うのです。
生きて
あなたに
笑って欲しいと
思うのです。
もう、
傷つけたく
ないのに、
もう、
不幸にしたく
ないのに、
そう思うのです。
愚か者です。



#067

まだ怯えているのです
牙を剥き出しにしながら
まだ見ぬ君を怖がって
居もしないのに威嚇する
けれど本当は
その手をもう一度差し伸べて欲しいと
その手でもう一度撫でて欲しいと
啼くこの心は犬のよう
捨てられて遠く啼く
野良犬のようです



#068

信じ方なんて分からないよ
信じるには勇気が要る
走り続けて疲れたんだ
信じるだけの力は
今はないんだ
ごめん、ごめんね
時間が要るんだ
それだけなんだ



#069

だって、こんな私
怖いじゃない
気持ち悪いでしょ
隣に居たくもないでしょ



#070

一瞬、何を言ったんだろうと思った。
低い声で、穏やかな響きで
何を言ったんだろうと思った。
よっつの音が頭まで
随分ゆっくりとやってきた。
心まで届いて、
情報が処理されるまでは
もっとかかった。
一番言って欲しかった単語。
一番言って欲しかった人。
本当は一番に会いたくて、
ごめんと伝えたくて、
嫌われるだろうと思った。
蔑視されると思った。
もう触れてはくれないと思った。
笑ってくれないと思ってた。
要らないって言われると思った。
今確かに口が動いた。
暗がりの中で君は言った。
私に向かって言った。
「おかえり」
と、
そう、言った。