ひまわりばあちゃん




僕らの町には、毎年夏になるとひまわりばあちゃんがやってくる。




ひまわりおばあちゃん、三輪車にいっぱいいっぱい黄色いひまわりを乗せてやってくる。

ゆっくりゆっくり三輪車をこぎながら、町の人にひまわりをうる。

皆ひまわりが大好き。

皆ひまわりばあちゃんも大好き。

もちろん僕もだーいすき。

今日も公園でかなちゃんと遊んだあと、お母さんと、かなちゃんのお母さんと帰ってたらひまわりばあちゃんに会った。

「ひまわりくださいな」

おかあさんたちがいう。

「はい、まいど」

ばあちゃんはニコニコしながらそう言ってお金をもらってひまわりを渡す。

そうして僕とかなちゃんのあたまを撫でてくれる。

僕もかなちゃんもばあちゃんのしわしわの手がだーいすき。








ばあちゃんは町の人気者。

八百屋のおじさんも、お菓子屋のおばさんも、落ち込んでる中学生のお姉ちゃんも、怒った顔の怖いおにいちゃんもばあちゃんに会えば皆笑顔。

はにかんだり、照れくさそうにしたりして、ひまわりを買う。

ばあちゃんはニコニコしながら言うんだ。

「はい、まいど」








あるひ、ばあちゃんがこなくなった。

どうしたのかな、今日はお休みかなってかなちゃんと言った。

次の日も、次の日も、ばあちゃんはこなかった。

どうしたのかしらってお母さんも心配そう。

かなちゃんも、かなちゃんのお母さんも心配そう。

町の皆も心配そう。

僕もすっごく心配。

ばあちゃん、ばあちゃん、ひまわりばあちゃん。

どうしたの。

病気かな。

けがしたのかな。

死んじゃったりしたのかな。

夜、寝るときにそう思ったら悲しくなって、お布団で泣いてたら、お父さんが来た。

お父さんは僕の話を聞いて頭をなでた後、内緒だぞって話してくれた。

「父さん、お母さんにプロポーズしたとき、ばあちゃんの花を渡したんだ」

ばあちゃんのひまわりがお父さんに勇気をくれたんだって。

だからお父さんも心配で泣きそうなんだって。

僕はお父さんと一緒に寝ることにした。

寝る前に二人でおばあちゃんが無事でありますようにってお祈りしてから寝た。







次の朝、起きたら机にひまわりがあった。

お母さんが嬉しそうに僕とお父さんに話してくれた。

「郵便とりにいったらおばあちゃんと会ったのよ、お孫さんが生まれるからってずっと娘さんにつきそってたんですって」

なあんだ、病気じゃなかったんだ。

僕もお父さんもホッとして笑った。

保育園にいって、かなちゃんに話してあげた。

かなちゃんも良かったねって嬉しそうに笑った。






ばあちゃん、ばあちゃん、ひまわりばあちゃん。

僕らの大好きなひまわりばあちゃん。

元気でよかった。

いつまでも元気でいてね。

またひまわりをいっぱい三輪車でもってきてね。

今度一緒に赤ちゃんも連れてきてね。





おわり。



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高校の頃チャリンコ漕いでたらふっと出てきた話です。
ちりんちりんってベル鳴らして籠にいっぱいの向日葵のっけて笑うおばあちゃん。